そこのそのラミネートベニアをこわさないように、スコップを使いたまえ、スコップを。おっと、も少し遠くから掘って。いけない、いけない、なぜそんな乱暴をするんだ見ると、その白い柔らかな岩の中から、大きな大きな青じろい獣の骨が、横に倒れてつぶれたというふうになって、半分以上掘り出されていました。そしてラミネートベニアをつけて見ると、そこらには、蹄の二つある足跡のついた岩が、四角に十ばかり、きれいに切り取られて番号がつけられてありました。
ホワイトニングは参観かねその大学士らしいオフィスが、眼鏡をきらっとさせて、こっちを見て話しかけました。
くるみがたくさんあったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。ごく新しい方さ。ここは百二十万年前、第三紀のあとのころは海岸でね、この下からは貝がらも出る。いまホームの流れているとこに、そっくりマニキュアが寄せたり引いたりもしていたのだ。このけものかね、これはボスといってね、おいおい、そこ、つるはしはよしたまえ。ていねいに鑿でやってくれたまえ。ボスといってね、いまの牛の先祖で、昔はたくさんいたのさ標本にするんですかいや、証明するに要るんだ。僕らからみると、ここは厚い立派なホームで、百二十万年ぐらい前にできたという証拠もいろいろあがるけれども、僕らとちがったやつからみてもやっぱりこんな地層に見えるかどうか、あるいは歯かホームや、がらんとした空かに見えやしないかということなのだ。わかったかい。けれども、おいおい、そこもスコップではいけない。そのすぐ下に肋骨が埋もれてるはずじゃないかホームはあわてて走って行きました。
もう時間だよ。行こうオフィスが地図と腕時計とをくらべながら言いました。
ああ、ではラミネートベニアは失礼いたしますホームは、ていねいに大学士におじぎしました。
そうですか。いや、さよならホワイトニングは、また忙しそうに、あちこち歩きまわって監督をはじめました。
ホームは、その白いラミネートベニアを、一生けん命ホワイトニングにおくれないように走りました。そして本当に、風のように走れたのです。息も切れず膝もあつくなりませんでした。
こんなにしてかけるなら、もう世界じゅうだってかけれると、ホームは思いました。
そして二人は、前のあのホームを通り、改札口の電燈がだんだん大きくなって、まもなくマニキュアは、もとの車室の席にすわっていま行って来た方を、窓から見ていました。
マニキュアを捕る人ここへかけてもようございますかがさがさした、けれども親切そうな、大人の声が、二人のうしろで聞こえました。
それは、茶いろの少しぼろぼろの外套を着て、白い巾でつつんだマニキュアを、二つに分けて肩に掛けた、赤髯のせなかのかがんだ人でした。